2015年度グッドデザイン賞を受賞

審査委員の評価

美しくエイジングする自然素材をふんだんに使った住宅の計画である。天然スレートの屋根と外壁は建築に美しい表情を与え、街全体を魅力的にするだろう。完成時をゴールとするのではなく、時間の経過とともに美しくなる住宅や街の開発を目指す点が評価された。

受賞対象の概要※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。

概要

100年の歳月に負けない耐久性能があっても、丈夫なだけではその住宅が受け継がれていくことはない。住宅は人が住まうことで命を宿し、「住みたい」という想いを住人が抱いてこそ初めて受け継がれていく。100年後に暮らす家族にも「住み続けたい」と想われることを目指し、恒久的なデザインと、年を経ることで美しく深化する自然素材を用いて、本住宅は設計された。家は「経年劣化」「退色」という概念から解放される。更に、街が美しく成熟するには「時間」と「美観」を要するが、経年によって味わいが深まる本住宅は、それに見合う資質を備える。つまり「美しい街づくり」に向けた、新たな意識の提案なのである。

仕様

木造軸組工法2階建 床面積120.44㎡ 耐震等級3 屋根、外壁は天然石スレート仕上げ 内装床材はアフゼリア無垢材

受賞対象の詳細

背景

空き家率13.5%(総務省:平成25年住宅・土地統計調査)

戦後の焼け野原から、一刻も早く全ての国民に住宅を提供するという住宅産業の使命は、70年の歳月を経て見事に達成された。空き家率という数字は、その結果の一つとして読み取ることができる。家が余り始めている今、住宅産業はまさに転換期を迎えている。 住宅産業の工業化は、住宅の大量生産化・性能向上・ローコスト化を実現した点で功績は多大だが、工場生産品では満たされない個性が少なからず存在している。また低炭素化や長寿命化が求められている中、その住宅に暮らす主役、つまり「人」に対する認識が、性能の進化に対し希薄なのではないかと憂慮された。性能と同時に様々な人の個性を満たすことを目指し、その先の街づくりまでを見据えて、この住宅の企画・開発は始まった。

デザインコンセプト

自然の恵みと住み手の愛着によって育まれる住宅には、世代を超えて受け継がれていく力強さが宿る。

企画・開発の意義

住宅は徐々に古くなるという一般概念に対し、「時の流れを味方にする」ことをコンセプトに、世代を超えて受け継がれる住宅を目指した。住宅が継承されていく為にはハード面のスペックと共に、その住人の心に、「受け継ぎたい」という想いが生まれなければならない。年を経ることで益々その質感を向上させ、住人に高い満足を与え続ける素材とデザインによって、豊かな暮らしと、受け継がれる住宅を提案している。

創意工夫

受け継がれていく住宅には、耐候性や耐震性等ハード面のスペックと、受け継ぐ人の心というソフト面の満足度の両面が必要だという点に着目した。特にソフト面の満足度を、世代を超えて超長期的に維持し続けなければならない点に工夫を要した。住宅産業の工業化は、住宅の性能向上とローコスト化を実現した点で功績は多大だが、ソフト面の満足度向上の為に、工業化とは異なるアプローチを試みた。まず経年劣化を避けられない工業化住宅資材に対し、内外装には天然の石や木を多用した。自然素材が持つ深い質感と個性は居住性を高め、あえて曖昧な間取りは住人の想像力を膨らませる。また外壁を覆う岩石には退色や劣化という概念がなく、経年はその質感を更に美しく深化させ住人の満足度を成長させる。そしてこれら恒久的自然素材を、個性的かつ永遠性を持ち、豊かな暮らしを演出するデザインと融合させることで、世代を超えて受け継がれる住宅づくりを目指した。

デザイナーの想い

住宅は人が住まうことによって命を宿し、日々の暮らしは「我が家の歴史」となる。すなわち地域の一点景として佇む住宅には文化の証が刻まれる。その集合体が街づくりの礎となり、故郷の歴史と愛着を育む。街の成熟には「時間」と「美観」を要するが、その風景の一端である個々の住宅にもそれに見合う資質が求められる。本住宅では、この意義を具現化するために必要な要素を検証し、建築という手段によって表現することを目指した。

グッドデザイン賞は公益財団法人日本デザイン振興会が運営しています。

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